おしらせ

 
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オールドレンズ写真学校12月ワークショップ
今月は12月17日(日)の予定です。場所はみなとみらい。詳しくはこちら
既に定員オーバーのためキャンセル待ちとなっています。最近の傾向として募集開始から3日程度で定員が埋るようですので、募集開始日を事前に確認しておく事が肝心です。

2009/11/16

LZOS INDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8 (M42)
インダスター61L/Z-MC

にブログエントリーの改訂版があります。
(2016年12月改定)


ロシア・テッサー系の末裔は
星が流れる水道管レンズ

【クルちゃん】ママー。パパがまたカメラ買おうとしてるよ!【パパ】しーっ。違うんだクルチャン。見てごらん。これはお星さまが沢山見える、ずーっと北の国で大昔につくられた秘密の水道管なんだ。すごい秘密があるんだよ。【クルちゃん】へぇー。何がすごいの?【パパ】エヘヘ。さすがクルちゃん。よく尋ねてくれました♪。クルちゃんには教えるけど、これはパパとクルちゃんだけの秘密だよ。いいね。【クルちゃん】うん。【パパ】エヘン。実はこの水道管はね、天の川に星を流すために作られたんだ。夜になると中をキラキラとお星さまが流れるんだよ。ほれぇ!この証拠写真を見てごらん。すごいでしょ。ママは星なんか流れないから買うなって言うけれど、日本の水道管しか知らないんだ。だから、パパとクルちゃんの秘密なの。【クルちゃん】へぇー。すごい。クルちゃんも、お星さまの流れる水道管ほしい。【パパ】エヘヘ。それじやぁ購入ボタンを押そうね「ポチッ」。

インダスター61L/Zはロシア(旧ソビエト連邦)が1980年からモスクワの近郊都市リトカリノにあるLZOS(リトカリノ光学ガラス工場)で製造した50mmの標準レンズである。現在は製造されていないが下の写真のように2005年製のシリアル番号を持つ個体が存在することから、ごく最近まで製造されていたようだ。通称「鷲の目」とも呼ばれシャープでキビキビとした描写で有名なカールツァイスのテッサー(4枚のレンズ構成)を模倣し、ソビエトの技術者SliusarevとSokolovによって設計された。はじめはレンジファインダーカメラのFED用に開発されたが、それをM42マウントに無理矢理対応させようとしたため、レンズが鏡胴の奥まったところに引っ込み、その副作用としてマクロ的な近接撮影が可能になった。
写真左:2005年製(シリアル番号0500323)の最後の新品個体だ。写真右:原型となった初期型ライカL/フェド(M39)用インダスター61 52mm/F2.8

テッサー型レンズには本家ツァイスのテッサーをはじめ、シュナイダー・クセナー、キルフィット・マクロキラー、ライツ・エルマー、ロッコールなど銘玉が数多くある。インダスター61もこれら同様に、合焦面の結像はバリッとして、たいへんシャープだ。 ところが驚いたのはボケ味で、実に綺麗で優雅なのである。テッサー型レンズのボケ味は硬めでザワザワと汚く乱れるのが一般的な認識である。インダスターはさらに絞り羽根が歪な形をとる事から、癖のあるボケ味を楽しめると期待していたが、ちょっと意外だった。ボケ味の硬さ/柔らかさはアウトフォーカス部にある像の輪郭のぼやけ具合に表れる。輪郭のぼやけ具合は球面収差が良く補正されるほど軽減され、その分ボケは硬くなる。その他の乱れも単色収差の補正レベルによって決まる。このレンズは諸収差が良く補正されておりボケ味は硬いが、結像が綺麗に整っている。2線ボケやグルグルボケは発生しない。硬くて綺麗なボケ味がこのレンズの特徴のようだ。
最短撮影距離:30cm, 絞り機構:プリセット式,  焦点距離:50mm, 絞り値:F2.8-F16, 撮影倍率1:約3.5, フィルター径:49mm, 重量(実測):212g, 鏡胴は金属製。ガラス面に施されたコーティングには製造時期により3種類ある。70年代に製造された個体は単層コーティング、80年代前半から中盤は紫色のマルチコーティング、80年代後期から数年間は一部個体でアンバーカラーのマルチコーティングとなる

INDUSTAR 61L/Zの構成図。A. F. Yakovlev Catalog The objectives: photographic, movie, projection, reproduction, for the magnifying apparatuses, Vol. 1, 1970からのトレーススケッチである。かなり肉厚な設計である

綺麗なボケ味を実現させているのは、光学系の凸レンズ部に用いられているランタンSTK-6系のクラウン輝度ガラスである。従来のガラスに比べ屈折率が大幅に大きくなったため、光学設計の自由度が増すとともに収差を無理なく補正できるようになった。球面収差や色収差などの改善により描写力は格段に増し、破綻無く安心して使えるレンズになったのだ。
本品の絞り機構はフルマニュアルである。絞りリングには各指標においてクリック感がなく、絞り羽根は実質的に無段階で開閉する。前玉が鏡胴の奥まったところにあるため、鏡胴自体がフードの役割を果たす。マルチコーティング処理の甲斐もあり、逆光下でもフレアの少ない極めて安定した画像がえられる。コントラストやカラーバランスのレベルは現代のレンズに近く、もはやクラシックレンズの範疇にはない。このように優れたレンズであるが、硬派で色気のない鏡胴デザインについては「水道管に似ている」など酷評が目立つ。さらに販売価格が安いため、チープな第一印象が足を引っ張り、このレンズが本来持っている優れた描写力が正当に評価されることは少ない。この点については日本製の古いレンズについても同じことがいえる。
Industar 61L/Zはアウトフォーカス部にある光点が星形にボケるという一芸を持っており、本や雑誌ではこの部分ばかり目立って取り上げられている。しかし、仮にその点を欠いたとしても、描写力の高い大変魅力的なレンズである。
左はヘリコイドリングを回して前玉をいっぱいまで繰り出した様子。全群移動でかなり長く繰り出される。最短撮影距離は30cmとだいぶ寄れるレンズだ。右は収めた様子。鏡胴側面に描かれた星のマークがロシアンないい味を出している

入手の経緯
2009年10月にeBayに出品していたロシア・ウクライナの業者・ブラディミル5129(取引件数817件・高評価率99%)から何と39㌦(約3500円)、送料込みで57㌦という格安価格で購入した。写真が極めて鮮明で鏡胴や中玉の状態がたいへん良い事をWEB上でハッキリと確認できた。即決価格が相場よりもかなり安めの設定なので、仮に届いた商品に不具合があっても被害は少ないと思い、不安は無かった。商品紹介ページには"This lens is in excellent condition.... I guarantee very good packaging....You will not be disappointed!...I am only begining seller, but I hope to receive only positive feedbacks. That is why I promise to work very honest. " などと暑苦しい商売哲学が書き込まれており、かなり楽し気な人である。よし買ぅたろ!。(ここでクルちゃんが登場…)
商品は落札後たったの6日で届いた。レンズはプラスティックのケースに格納されており、新品に近い美品であった。
【2010年12月追記】
最近はeBayなどの海外市場でも、以前のようには状態の良いもの(=デットストック)が出回らなくなってしまった。これに連動して中古相場はジワジワと高騰気味になっている感がある。2009年後半では総額80㌦もあれば新品同様の品が入手できたが、2010年後半では100㌦オーバーでないと入手できない。本品の国内相場は綺麗なもので1.2万円~1.4万円程度で安定しているが、海外市場に連動し国内でも今後は高騰すると思われる。

試写テスト
前評判ではロシアレンズに良くある褪せたような地味な発色になるという噂を耳にしていたが、良い意味で裏切られた。地味すぎず派手すぎず、鮮やでしっかりとした力強い発色が特徴のようだ 

・画像の周辺部まで破綻のない整った結像が得られる。各収差の補正は良好で、乱れの少ない優れた描写と、整ったボケ味が特徴。ボケは浅め

・合焦面は絞り開放からたいへんシャープ

・コントラストが高く、メリハリのある撮影画像が得られる

・レンズの前玉が鏡胴の奥まった位置にあり、多少の逆光下でもフレアは目立つほど出ない

・発色に癖が無く、色再現性は極めて高い。カメラ側のカラーバランス調整は特に必要なさそうだ

欠点の少ない完成度の高いレンズだ。癖の無い現代的な描写(つまり無個性)が唯一の汚点なのかもしれない。以下、いつものように無修正・無加工のJPEG撮りっぱなし画像である。
F5.6 左側の画角外には窓があり半逆光気味だがフレアは出ていない。明暗の差が大きいケースだが、白とびや黒つぶれには至っておらず、階調変化は滑らかで破綻がない(なんで乳でてるの?)

F4 色や艶の再現性はパーフェクト。ビビットな素晴らし描写だ


上・下段ともF5.6:合焦面の高いシャープネスとアウトフォーカス部の美しさが魅力

F8:この位の距離のアウトフォーカス部が最も煩く乱れるのだが、このレンズのボケは整っており目障りな程にはならない

F2.8 木更津・駅前大通りの星型イルミネーション。早速ダビデの星が出現している。ほれ、クルちゃん見なさい
F5.6  色が濃く微妙な変化に富む日陰の石段を鮮やかに写すことができる

F5.6 乱れの少ない美しいボケ味。(神社なのに仏を発見。こういうところが日本的だ!)
F2.8 ボケ味は硬めだが、綺麗に優雅にボケてくれる
F5.6 周辺部まで点光源に乱れはない。さすがはテッサー。非点収差は良好に補正されている
F5.6 風で小枝が揺れる場合の星ボケ。面白いボケを演出するためのヒントを得た気がする
F5.6 星ボケはこのとおり普通に撮っても出現する

F4 品格のある色濃いレッドをきちんと再現する。素晴しい

★撮影環境: Industar 61 L/Z-MC 50mm/F2.8 + EOS Kiss x3 + HAKUBA RUBBER HOOD

一般に自然なボケを得るためには、絞り羽根の形が真円に近いほうが良いとされている。こうした理由から現代のレンズには、ほぼ全ての製品で円形絞りが採用されている。ここで言う「自然なボケ」という明確な意味はよくわからないが、アウトフォーカス部の像がボケた点光源の集合体として重ね合わされて結像する際に、どのような状況においても、見た目にいちばん美しいボケ方を与えてくれるのが円形絞り羽根ということなのだろう。インダスター61L/Zは絞り羽根が、歪(いびつ)な星型になるため、パッチワークを当てたような面白いボケが得られるのではと期待していた。ところが、絞りがF4やF5.6で得られたのは、癖の無い自然で平凡なボケであった。もう少し絞ると羽根の形の歪さは増すが、ボケは控えめになってしまう。羽根の形の歪さは光点を撮るとき以外では効果が薄いようなので、いまひとつ面白さに欠ける。ボケの事は別として、私はこのレンズの描写がかなり気に入った。コストパフォーマンスも高く、オススメの一本だ。今度はクリスマスの頃にに持ち出そう。

2009/11/06

eBayの中古レンズ業者からオールドレンズを仕入れる

eBay.comは1995年に米国カリフォルニア州で生まれた世界最大規模のネットオークションである。2007年6月時点において世界28ヵ国に拠点を持っている。日本へは1999年に進出したが、YAHOO!オークション(通称ヤフオク)が幅を利かせていたため、シェアを伸ばすことができず、2002年に早々と撤退している。一方、多くの経済大国ではeBayがネットオークション市場のトップシェアを獲得している。外国製のオールドレンズを国内市場よりも安く入手できるのが特徴であり流通量も多い。珍品を探し求めるならば中古店やヤフオクで探すよりも効率が良い。世の中にはアンティークカメラ専門のネットオークションも存在する。West Licht PHOTOGRAPHICAが良い例だ。品質が高く珍しい品が多数出品されるなどeBayよりも魅力的だが、オークションの開催期間が年数回に限定されているため、実際には流通量に勝るeBayが主な入手先になる。
 eBayは大変魅力的な市場であるが、欠陥品がなんの断りもなく売られていたり、品質の劣悪な品がさも良品であるかのような解説で売られていることがよくある。買い手は商品の品質をよく分析し、細心の注意を払いながら購入(入札)する必要がある。万が一、(1ヵ月経っても)商品が届かない、あるいは出品時の解説には無い重大な欠陥を持つ品が届いたら、ためらうことなく出品者に返金、返品を要請しよう。商品を買い手の手元へと確実に届けるのは出品者側の義務とされている。逆に言えば、きちんと返品商品を出品者の手元に届けるのは買い手側の義務なので、ゆうちょ銀行のEMSなど配送状態の照会ができる配送サービスを選ぶほうが無難である。出品者が返品や返金に応じない場合には、送金サービスのPayPalに「異議」や「クレーム」を申し立てれば、出品者はPayPalから対応を迫られ、買い手は一定の限度額まで保護される仕組みになっている。
 いろいろ偉そうなことを述べたが、そんな私でさえ過去に購入した28本のレンズのうち、実際に届いた商品に満足した割合は半数の14本のみである。残りの14本は重大な不具合を持っていた。このうち4本は返品、2本はジャンクとして売却、1本は欠陥を気付かずに所持、2本は未修理のまま使用中、5本は自費で修理した。最後の5本は入手の難しいレアなレンズであったため返品したくなかったのである。下の図は私のeBayにおける2007年から現在までのレンズの購入歴である。レンズの購入にどれだけリスクがあるのかを感覚的に知る一つの手がかりにしていただければ幸いだ。ヤフオクとは異なりeBayでは売り手による商品の評価がかなり甘いし、説明もしっかりしていない。日本では「お客様=神様」といった国民性が市場のモラルを支えているようだが、外国では出品者と購入者は対等なので事情が異なる。出品者は日本人よりも大らかな気持ちで商品を販売している。私たち日本人は特に気をつけなければならない。ボロボロでも完全(パーフェクト)に動く品(完動品)であれば、それだけでも中古品としてはGOODなアイテムとして取り扱われる。購入者には商品に対するシビアな目が要求されている。


赤・・・解説と異なる状態(返品含む) 青・・・解説どうり 黄色・・・微妙; 統計的には購入事例の約半数において、事前の説明にはなかったトラブルに遭遇している。そんな私には偉そうなことを言う資格はないのかもしれないが、これでもかなり気をつけているつもりなのだ

eBayでオールドレンズを購入する場合には、できるだけ"MINT(新同品)"を選ぶののが無難だ。"Excellent"の評価程度では、使用感たっぷりのB級品が届く可能性が大きい。"GOOD"の場合はオンボロ品、"Well used"に至っては、きちんと動くのが奇跡である。 私はレアなレンズを狙ることが多いので、しばしば博打に出てしまう(困った性格だ)。そんなわけで、短期間にいろいろな失敗を経験することができた。以下に商品の解説に目を通す際のポイントを列記しておく。
  • 商品の解説文が明確で、ガラスの状態、鏡胴の状態、ヘリコイドリングのスムーズさなど基本的な項目がきちんと述べている
  • 中玉に光を通し、レンズの状態について鮮明な写真を示している
  • 同じ業者の他の商品をチェックする。商品の欠陥や不具合を包み隠さずに示す姿勢が業者にあれば、その業者は健全だ。逆に写真で判断できる不具合箇所をきちんと文章で解説していない業者はパスしたほうが無難だ
  • 業者による独自の格付け(Mint, Excellent, Good, Well used など)があるならば、その業者の他の商品に対する格付けがどうなっているかを確かめておこう。いつも同じような評価を繰り返しているならば、その業者は真面目に商品を見ていない可能性がある
  • 写真が不鮮明な場合は間違いなくハズレだ。勇気を持ってパスしましょう
商品を返品し返金してもらう場合には、出品者の返品規定(リターンポリシー)に従う必要がある。落札者は入札前にこれに同意しているため、出品者に対してこの規定から外れるような要求はできない。多くの場合、返送費用は落札者側が負担することになっている。私の場合は返送に郵便局のEMSを利用し、約1000~2000円程度の返送費用を自己負担した。出品者は返送品が手元に戻ったことを確認し、代金の総額(落札代金+手数料+配送料)をPayPalを通じて落札者に返金する。この場合、出品者から落札者のクレジットカード会社にPayPalを通じて代金が返り、クレジットカードのその月の利用請求額から返金額分が差し引かれる方法で落札者の手元に戻る。
 商品を返送する際には相手国の税関で税金を二重取りされないように、包装箱に貼る宛名ラベルに、ハッキリと「これは売り手への返品である(返金済み)」などと明記しておく事をオススメする。例えば東欧のチェコでは、商品価値の19%分の税金を取るので(後で売り手から請求される)、思わぬところでコストがかかってしまう場合がある。
 最後に、ドイツ系レンズの出品数が豊富な中古カメラ&中古レンズ専門業者の有名どころを幾つか列記しておく。優良な業者かどうかは私にはわからないので、これらの業者を利用する際は自己責任でおねがいしたい。  

GOKEVINCAMERAS(米国)
品数が豊富でレア物を多く揃えている。商品の写真を大量かつ鮮明に、様々なアングルから示してくれる。不具合の箇所を包み隠さない主義がある。レンズの中玉に光を通し、ガラスの状態を鮮明に示してくれるので安心できる。ただし、解説文は少なめで、写真による購入者の判断に委ねる傾向が強いので、ヘリコイドリングの滑らかさや絞り羽根の開閉の的確さ、各部のガタつき、無限遠方が出るかなどについて購入前に質問したほうがよい。私も1度だけガタつきのあるレンズをこの業者から購入したことがある。

STILL22(ギリシャ) 
品数は少ないが状態のよいレアな品を厳選して出品するのでファンが多い。解説が包み隠さずに的確であることが特徴だ。レンズの中玉に光を通し、ガラスの状態を鮮明に示してくれるので安心できる。M42マウント用のレンズを多く出品するのがこの業者の特徴だ。スナイプ入札を仕掛ける追っかけスナイパーが数多くいるので、商品の落札難度が高い。
 
WWWCAMERAMATECOM(チェコ)
品数が豊富でレア物も揃えている。商品の写真を鮮明に示してくれる。大きなハズレの少ない業者のようだが、商品の解説はいつも同じで「クリーンな光学系、スムーズなヘリコイドの回転」に付加情報を加える程度だ。私が購入したレンズは写真どうりの美品であったが、ヘリコイドのローテーションはかちんこちんに固かったので、先の説明文は形骸化している模様だ。

他にもオススメの業者がありましたら、ぜひ教えてください。